普通の桐箱屋さんが海外販売するまで
広島県の片田舎にある弊社は、ここ数年で、海外の展示会やコレクション。ハイブランドに使われる箱を手掛けるなど、目覚ましく躍進しています。しかし、そこには苦難の時代がありました。
桐箱屋と言えば、かつてはそうめんや線香などに使われていました。近年、木箱や紙箱などの利用が増え、以前より需要が減少し、多くの桐箱業者が廃業に追い込まれました。
この波に飲み込まれそうになった弊社も、2004年から2008年頃は大苦難で売り上げが低迷。
「このままではダメだ!」
従来のやり方を変える決断を下し、試行錯誤を繰り返しながら新たな道を歩み始めたのです。
その結果、海外で採用されるなど、世界的な評価を得るまでになりました。
どうやって、海外に採用してもらえるようになったのか?ここまでの私たちの取り組みを紹介したいと思います。
1.固定観念を捨てる
我が社の女性社長の会社です。社長が社員として入社した後は、跡継ぎとして女性であることから、社内外からの評判が厳しくなり、社員や同業者からの陰口も絶えませんでした。しかし、彼女は元々負けん気が強く、「絶対に見返してやる!」という強い意志を持って仕事に取り組んでいました。
しかし、従来のやり方では仕事が減少する一方。
そこで新たなアプローチを試み、当時は珍しかった桐箱のネットショップを備えたホームページを2000年に立ち上げました。
桐箱は受注生産商品であり、変色しやすく、かさばるため保存が難しいという課題がありました。しかし、お客様の需要に対応するため、「1個から購入でき、すぐに届く」をモットーにし、使いやすいネットショップの改良を継続的に行ってきました。
また、女性目線での商品開発に注力し、自社商品を有することで提案が容易になり、OEMの提案も可能となりました。
ここまでは一般的な企業の進化ですが、その後、商品開発において新たな課題に直面します。
ある日、丸形の乳歯ケースを作ろうと奮闘が始まりました。しかし、桐の性質からくる難しさから、職に「それは無理だ!」と言われ挫折しました。どうやったらキレイな丸になるのか?自社では検討もつきませんでした。
そこで、地元の企業に相談した結果、3ヶ月後には丸形の乳歯ケースを実現させることができました。
桐に詳しい職人たちも「できない!」と言った状況から抜け出し、挑戦した結果の出来事でした。
この体験をもとに、「作れない」の固定観念を排除する取り組みを進め、NC加工機の導入やレーザー加工機器、カラーレーザープリンターの投入、桐箱製造ラインの構築など、あらゆる固定観念を排除し仕事に取組んで来ました。
おかげで、他業界からも注目を集めるようになり、桐箱商品が雑誌などでも取り上げられるようになりました。
2.日本らしさ
海外で注目をあびていることとして、日本らしさというのがあります。
桐を生活用品に扱う文化は日本に根付いており海外にはありません。よく使われる桐箱の製法も独特です。中身を湿気から守るために生まれた「印ろう箱」の技術を海外で見られる事はほぼなく、日本独自の技術だと言われています。桐箱は手作業での製作ということもあり、伝統技術としての日本らしさも出せます。
また、日本政府の家紋としても扱われる桐の文様。桐のルーツは中国にあり、中国では伝説の霊鳥である鳳凰が留まる木と言われる、聖なる植物。 そのため桐紋は格の高い家紋として扱われ、鎌倉時代までは菊紋と並んで天皇家の紋でした。海外で桐を説明するには「日本らしさ」が絶好に出せるのです。
これを上手く提案することで、桐箱を海外で利用してもらえる事が増えています。
3.コラボレーション
2020年頃から、桐箱を海外に大量に輸出するようになりました。桐箱は基本的に外箱として機能し、企業とのコラボレーションが主流です。
2023年になると、私たちの会社の社名を商品に加工してくれる企業も現れました。このようなコラボレーションは一般的ですが、私たちは製作を他社に依頼したり、自社商品案を他社デザイナーと共に考えたり、海外のコーディネーターに協力を仰ぐなど、自社単独でのアプローチを辞め、積極的に協力関係を築く方針をとっています。
他人に頼ることは恥ずかしいと思われがちですが、その協力によって生まれる新しい価値が、弊社の売り上げを拡大させています。これにより、新しいアイデアやデザイン、市場における新たなニーズに対応し、グローバルな展開が実現できるようになりました。
今、海外での販売に悩んでいる企業様とも、是非コラボレーションしたいと考えていますので、お気軽に声をかけて頂ければと思います。それが形になるかどうか?の心配より、少しでも前に進んで新しい価値を作ることに意欲を持っています。
自分の価値は自分で作れる
最初に海外から大口での連絡が入った際、私たちは英語が理解できず、頼んで見てもらうと、支払い条件が3ヶ月後とされていたため、その注文を断る決断をしました。しかし、相手方は有名なハイブランドでありながら、「支払い条件は調整可能ですのでお願いします」と伝えてくれました。
2023年の年始には、ニューヨークで桐箱を販売するという目標を立てました。しかし、その直後にはニューヨークから連絡があり、驚きました。
自分たちの価値は「他人が決める」とされることが一般的ですが、その価値の土台を築くのは自らの行動です。他者の意見に左右されず、夢を追い求め、真摯に前進してきたからこそ、海外への販売ルートを作る事ができました。
弊社の受注はホームページが主です。ホームページでは、高級感を演出するよりも敷居を低くし、明るいイメージを大切にしています。
適切な連絡手段を備えていれば、世界中どこでも売れると信じています。この信念のもと、私たちの桐箱が海外での販売を実現できたと感じています。